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第12章 赤葦さんとデート


少しだけ、後悔している。

あの言い方じゃ、キスを狙ってるんだろ、って疑ったようなものだ。
赤葦さんが、プレゼントをネタにするような人じゃないと分かっているのに、恥ずかしい事をした。

顔を見る事が出来なくなって、手の中の箱に視線を落とす。

「…すみませんでした。」

疑うような事を言ったのだから、謝るのが妥当だ。
いつまでも、モヤモヤして気まずい状態でいる訳にもいかない。

窺うように視線を向けると、意味が分からないと言いたげな顔をしていた。

「あの、口紅のプレゼント…。意味を知っていたので、変な疑いを…。」
「…あぁ。」

説明をする途中で、納得したように頷く赤葦さん。
その顔は、意味あり気に笑っている。
口角だけを上げた、企み笑顔に見える。

「本当は、知ってたよ。」

その笑顔のまま、静かに吐き出された言葉。

知ってた、って何だろうか。
口紅のプレゼントの意味の事かな。
じゃあ、本当に狙ってたの?
それとも、借りた物を新品にして返しただけだから、変に勘繰られたくなくて知らないフリをした?
分からない。
その笑顔の意味も、言葉の意味も。

「そろそろ帰ろうか。」

思考を遮る赤葦さんの声。
さっきの笑顔はなくなっていて、いつも通りの無表情で。
深い意味は無かったんだろうと思った。
考えてみれば、皆と平等であろうとする人が、抜け駆けするような事しないだろうし。

手を差し出してきているのは、また繋ぎたい意思表示だと分かって手を重ねる。
指を絡めてきたのには驚いたけど、その程度で嫌だとは思えず。
恋人繋ぎの状態で家まで帰った。
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