第12章 赤葦さんとデート
縁日のやっている通りの端、車の通行止めをしている看板の傍で並んで座る。
地べたに座り、いい年した男女が二人で黙々と膝に乗せた品を食べ続ける光景は、周りから見たら異様なんじゃないかと思った。
赤葦さんが全てを食べ終わった頃、私の方は限界で半分以上を残している。
その残りも綺麗に食べてしまった姿を驚きながら見ていた。
「あの、普段の食事って量が足りなかったりします?」
これだけの食べ物を詰め込める許容量があるなら、私が作っている分で足りている訳がない。
「そんな事はないよ。…ただ、格好付けたいだけ。りらは料理をする方だから、残された食べ物とか見るの嫌でしょ。」
空になった容器を袋に詰めて片付けながらの返答。
無理に食べさせたようで申し訳なくなった。
「…あ。」
突然、一つの音を発して私の顔に手が近付いてくる。
親指が唇を擦ってすぐに離れていった。
「青のり、付いてたよ。」
付着しただろうそれを確認して親指を舐めている赤葦さん。
「…言って頂ければ自分で取ります。」
その行動が少しだけいやらしく見えて、紛らわせようと自分の手の甲で唇を拭った。
「あぁ、そうだ。…唇で思い出したけど…。」
こちらの抗議など意に介さなかったようで、鞄を漁っている。
「はい、これ。」
少しして、出された手。
何かを渡そうとしているのは分かって手を差し出す。
手の平に、小さな長方形の箱を乗せられた。