第12章 赤葦さんとデート
一日の大半をリビングかキッチンで過ごしている私は、今日も当たり前のように朝食の片付けが終わるとソファーで寛いでいた。
「…りら、俺と出掛けようか。」
「行きたい所でもあるんですか。」
「いや、特にはないけど、嫌?」
「いえ、構いませんけど。」
突然の提案で、目的もなく赤葦さんと二人で外に出た。
何か話でもあるのかと思って顔を見上げる。
「…この前、黒尾さんとデートしたでしょ。」
「はぁ、まぁ…。」
「りらの事に関しては、平等でありたいと思うんだよね。」
「何故でしょうか?」
「もし、俺達の誰かと…なんて事になったら他の人達が居づらくなるから。」
目が合うとこちらの意図に気付いてくれたようで、答えてくれた。
歩きながらの会話で出掛けようと思った理由は判明したけど、腑に落ちない。
皆さんに対してラブはないと公言したというのに、誰とそんな関係になると言うのか。
「有り得ないです。」
「りらがそうだとしても、周りも同じとは限らないよ。…俺も含めて。」
確かに、私が同居人として、性別関係無く過ごしていても、男女間の事だから、何があるか分からない。
それには、納得するしか無かった。
「俺達が君をラブの意味で好きになる可能性はゼロじゃない。だから、皆が同じくらいの距離感を保てたら良いと思ってるんだ。
君を好きになったら、他の同居人に嫉妬するだろうからね。」
「赤葦さんでも嫉妬しますか。」
「…どうだろう。少なくとも、黒尾さんからりらとデートしてるからって連絡貰った時はイラッとしたけど。…この話、止めようか。」
話を切られてしまうと元から無駄なお喋りはしない私に新たな話題が浮かぶ訳もなく。
無言でただ歩き続けていた。