第11章 黒尾さんとデート
食事を終えて店を出る。
慣れない服を着ているし、緊張したのもあったのか疲れた。
そんな私を気遣って帰りはタクシーで、その乗り降りすら手を差し出してくれる。
「今日は有難うございました。」
家に入る一歩手前で頭を下げた。
服を買いにいった辺りは迷惑だと思ったけど、こんな機会でもなければ行けなかったかも知れない高級店の食事も味わえたし。
本当に感謝してのお礼。
「また連れてってやるよ。今度は別の店も。」
「それは申し訳ないので良いです。」
「俺が連れてきたいんだから良いだろ。」
「何故ですか。」
楽しい会話が出来る訳でもない私と何回も食事に行ったって黒尾さんに得はない。
寧ろ、お金を使うんだから損である。
「お前みたいな美人さんとデートとか、何気に気分良いからな。」
なんだか誤魔化されたような気がする。
多分、他に理由があっても言わないだろうな。
裏がありそうだ。
これからは、黒尾さんの誘いには乗らないと誓った。