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第11章 黒尾さんとデート


やっと、グラスに口を付けてワインを喉に流し込む。
アルコールが入った事で少しは気持ちが落ち着いた気がした。

すぐに空いてしまったグラスに、ワインを足そうとボトルに手を伸ばす。

「手酌はマナー違反。注ぎ足すのはボーイか、男性。女性はやらないもんなんだよ、日本式のお酌じゃねぇんだから。」

黒尾さんのマナー講座はまだ続いていたようだ。
ボトルを手に取り、グラスに注ぐ姿も絵になる。

「…で。どうしたんですか。こんな所に連れてきて。」

見とれてしまいそうになったのを誤魔化すように話題をマナーの話から切り替える。
普通に考えれば彼女との特別な日のデートとか、オトしたい女の子を連れてくるものだろう。

「俺のバイト先、まぁバーなんだけどな。ココと系列一緒で、この前の飲み会でディナーチケット当てたから。」
「それなら彼女と来たらどうですか。」

彼女じゃなくても、黒尾さんなら相手してくれる人、いっぱいいるだろうに。

「お前と来たかったんだよ。」

何故だろうか。
低く、囁くような声音で言われた言葉の真意は分からない。
それを問う前に料理が運ばれてきて、話は中断になった。
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