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第10章 木兎さんとデート


危なかった。
あの、馬鹿力で抱き締められて逃げられなかった。
黒尾さんが来てくれなかったら、どうなった事か。

「サルじゃねーよ!邪魔すんな!」
「邪魔するに決まってんだろ。りらが嫌がってんの、見て分からね?」
「嫌がってねーよ!りらちゃん、俺に良いお父さんになるって言ってくれたんだぞ。」
「…は?お前が?」

2人の言い合いを止めるべきか迷っていると、黒尾さんが私を見た。
本当に言ったか確認したいようだ。

「言いました。子どもと同じくらいはしゃげるのは、才能かと。」

嘘は吐けないから頷いて、そう思った理由を説明する。

「あー…。成程。子どもと同レベルっつか、単なるガキ扱いされただけじゃねぇか。」
「ちっげぇよ!俺との子どもが欲しいって意味だろ?」

黒尾さんの方が正解だ。
なんで、木兎さんはそこまで飛んだ勘違い出来るんだ。

「りら、子ども扱いしただけだろ?」
「違うよな?俺と、そうなりたいんだよな?」

勘違いされたままだと、また襲われかねないよな。
正直に子ども扱いしたって言ったら落ち込んで面倒だろうけど、その方がマシか。

「黒尾さんの言った通りです。子どもと同レベルだと思いました。」

上手く誤魔化す事は出来なくて正直に答える。
予想の通り、木兎さんは落ち込み、黒尾さんがそれをからかっていた。

家に帰っても、木兎さんの機嫌は戻らず。
他の2人も気にしていたけど、何があったかを知るなり無視し始めてしまって。

流石に可哀想になったから、晩ごはんは奮発して牛肉を買ってきた。
肉を見て機嫌が良くなる姿を見て、単純さはやっぱり子ども並みだと思った。
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