第10章 木兎さんとデート
男の子が見えなくなってから、ようやく思い出したかのようにこちらを振り返る木兎さん。
「木兎さん。帰りましょうか。」
「…あ、わ、悪かったって!放っといてごめん!」
荷物を抱えて声を掛けると慌て始める。
怒っている訳ではなかったから首を振った。
「怒ってません。夕飯の買い出し行きたいので、帰りましょう。」
「あ、そーなの?じゃ、帰ろうぜ!」
すぐに表情は笑顔に戻って、手を差し出される。
意味が分からず首を傾けると手を握られた。
「来る時、先歩いちまったから。これなら並んで歩けるだろ?」
何故か納得してしまって手を繋いだまま帰路を歩く。
「…木兎さん。」
「…ん?なんだ?」
「私の事をイイ嫁さんになるって言いますけど。木兎さんは良いお父さんになりそうですね。」
さっき、子どもと遊んでいる所を見た素直な感想。
小さい子と同じレベルではしゃげるのは、ある意味才能だと思う。
まぁ、木兎さんが子どもレベルの思考しか持ってないんだろうけど。
「りらちゃんっ!」
理由を言わなかったから、ただ褒められたと勘違いしたようだ。
テンションが上がって、繋いだ手が離れて抱き締められた。
人が行き来する道の真ん中でこれは恥ずかしい。
単純な人は褒め方にも注意が必要だと分かった。