第10章 木兎さんとデート
食後のお茶を二人で啜る私達の足元にゴムボールが転がってくる。
木兎さんはそれをすぐに拾って、持ち主だろう男の子の元に歩いていった。
「あ、ありがとー…ございます。」
大きな男の人が近寄ってきて怯えたような顔をしてる男の子。
それを気にせず、目線を合わせるようにしゃがんだ木兎さんは人懐こい笑顔をしていた。
「おう!坊主、一人か?何やってんだ?」
「ボ、ボールで、あそんで…。」
「バレーボール、知ってるか?」
「…バレー?」
子ども相手にマシンガントークを放つ木兎さん。
男の子の方は、競技らしい言葉を聞いて少しだけ興味を持ったようだった。
「兄ちゃんな、バレーの選手でエースなんだぞ!凄ぇだろ!」
「エース…。かっけぇ!なぁ、そのバレーボール教えて!」
「おぅ!」
子どもというのは木兎さん同様単純で、格好いい響きに惹かれるようだ。
ゴムボールでパス練習らしい事を始めてしまった。
デート中に相手放って、あれは良いんだろうか。
まぁ、あの五月蝿い人の相手をしなくて済んだから私は構わないんだけど。
先に帰る訳にはいかないだろうから、子どもと遊ぶ様子を見守っていた。
やっと、二人の遊びが終わったのは一時間程が経過してからだった。
母親の迎えに走っていく男の子。
無邪気に木兎さんに手を振って公園から出ていった。