第10章 木兎さんとデート
お弁当を入れた大きめのトートバッグを肩に掛け、二人で家を出る。
人の歩調に合わせもせず、先を歩く木兎さんを早足で追って公園まで辿り着いた。
平日の昼間、小さな子どもを連れたママさん達がいるくらいの閑散とした公園。
ベンチに腰掛けて膝の上にお弁当を準備する。
「おぉ!気合い入ってんじゃん!俺とのデート、楽しみにしてくれたんだ!」
「はい、楽しみにしてました。木兎さんが遅くならなければもっと楽しめました。」
「マジで!?俺も楽しみだった!」
品数の多いおかずに目を輝かせる人に精一杯の嫌味を言ったつもりだったけど、楽しみ、という言葉を使った為か喜ばれてしまった。
「じゃ、イタダキマー…。」
「…手、拭いてから食べて下さい。」
手掴みで食べようと弁当に伸びてきた手を掴んで止める。
バッグからウェットティッシュを取り出して渡すと、素直に手を拭いていた。
「よしっ!じゃあイタダキマス。」
拭いた手を自慢気に私に見せてから、弁当の中身を摘んで口に入れていく。
「うまっ!マジでりらちゃんはイイ嫁さんなるよな!」
前にも聞いたような褒め言葉を口にしながら次々と料理を平らげていった。
遅刻はされたけど、これだけで許せる気になってしまうのは、相手が木兎さんだからだな。
空っぽになった弁当箱を眺めて嬉しく思った。