第10章 木兎さんとデート
翌日。
本当に早く起きてくるかは怪しかったけど、約束したからにはお弁当を作っておいた。
何時も通りの朝は早い二人は普通に朝食を摂って出掛けていく。
木兎さんは起こされても起きなかったのか、リビングには来なかった。
一応、お昼までは待っていたけど、それでも来ない。
普通の女の子とデートだったらフラれるんじゃないかと思う。
もう断りを入れてしまおうと部屋に行った。
「ぐあぁー!髪型がキマんねー!」
部屋の扉をノックしようとした所で、中から奇声。
起きてたならまず顔ぐらい出しにきて頂きたかったものだ。
今まで寝てると思って待っていたのが馬鹿らしい。
「木兎さん、開けますよ。」
「あ、ちょっと待って待って!まだダメ!ヤメテ!」
外から声を掛けると拒否されたけど、無視をして扉を開けた。
中にいた木兎さんは普段と変わらない髪型で、何を迷っていたのか分からない。
「木兎さん、完全に遅刻です。何をやってたんですか。」
「だ、だってりらちゃんと初デートだろ?だから格好いい俺がいいだろ?」
「そんな事に同意を求められても困ります。もう行きませんよ。昼過ぎてます。お弁当、作りましたからお昼ご飯にして下さい。」
当初の目的を果たして、何かを言われる前にリビングに戻ろうと歩きだした。
すぐ後からドタドタと慌てた足音がして、腕を掴まれる。
「弁当、あるんだろ?じゃあ、外で食おーぜ!ほら、時間ないんだろ!早く、早く!」
私の腕を引いてリビングに連れ込み、待たせたクセに逆に急かしてきた。
「…晩御飯の買い出しまでですよ。」
言っても聞かないのは分かっている。
下手をしたら自分が遅れたにも関わらず、約束したのにデートしてくれなかった、なんて落ち込むから条件付きで承諾した。