第9章 再会
ちゃんと話が出来て良かったと思う。
初めは、こんなタイミングで、変わってもいない、話をする覚悟もない、自分では駄目だと隠れてしまおうとすらしたのに。
逆に会おうと覚悟して来ていたら、もっと緊張して喋れなかったかもしれない。
木兎さんの馬鹿さ加減にもたまには感謝しないと。
「木兎には感謝、だな。熊野と会えて、話せて良かった。…一つ、いい?」
私の思った事と、木葉さんの言葉が同じで嬉しくて思わず顔が緩んだ。
そのまま頷いて言葉の先を促す。
「オトモダチからって、アリ?」
それは告白のようで、答えに迷った。
「俺は、またこうやって話したいし。昔、一緒に飯食ってた先輩じゃなくて、友達になりたい。アイツ等程、近い存在にはなれないだろうけど、なっ。」
木葉さんは譲らないようで、強引に手に何かを握らせてきた。
自分の手元を見ると、この店の名刺で、裏には手書きの電話番号とアドレス。
「…宜しく、お願いします。」
断るような事柄でもなくて、名刺を握り締めて答えた。