第1章 始まり
「はいっ!りらちゃんのっ、ちょっとイイトコ見てみたいっ!」
また始まる一気コール。
私ときとりちゃんの様子をただ眺めていた二人も調子を合わせて手拍子をしてきた。
諦めて立ち上がり、グラスの中身を一気に口に含んで飲み込む。
喉が焼ける感触と、僅かに胃から水分が上がってくる感覚も耐えて口から離したグラスをきとりちゃんに渡して、引き換えにボトルを奪った。
「友情一気が見てみたい、なんてコールでもしましょうか?」
ボトルを持つ手の甲で口を拭い、一切の笑みもなくきとりちゃんを見る。
「止めろよ。センパイ、そんな強くねーの、親戚なら知ってんだろ?」
何時の間にか私の隣に立ち、ボトルを奪おうと手を掴むトサカ。
卑怯なやり方を咎めようと思っただけで、実際に飲ませる気はなくボトルを簡単に手放した。
それが意外だったのか、呆気に取られるトサカを無視して元の位置に座り直す。
流石に気持ち悪く、酔いが回り出したような感じがあるが意地と自棄で缶に手を伸ばした。
「これで顔色変わらないとか、どんだけ強いんだよ。」
ボトルのラベルと私を交互に確認しながらトサカが呟いたのが聞こえる。
気分は悪いけど我慢出来ない程ではない。
処理能力の高い内臓に感謝して缶の方のアルコールを流し込んだ。