第1章 始まり
関わりは無くても先輩だった人と、年齢は分からないが多分年上の異性ばかりの空間に疲れが出てくる。
知り合いを追い出したのは自分だけど、これが長時間続くのは辛い。
やっと赤葦さんの笑いが収まった頃、見ていた扉が開いた。
「ただいまー。…って、なんか飲んでるのに静か過ぎない?」
入ってきたのは勿論家主で、アルコールが入っている場面では珍しいだろうテンションの低さに眉を寄せながら私に近寄ってくる。
差し出された袋の中を見ると中に入っていたのは注文したものではなかった。
「スピリタス…。」
世界最強と名高いアルコール度数を誇るお酒。
ラベルを見ると96度。
いや、これはもうそのまま飲めるレベルのものではない。
流石に無理だと拒否しようと顔を上げて彼女を見るが、すでにその手にはグラスが握られていた。
「これくらいじゃなきゃ、アンタの許容量は満たせないでしょ。」
なんて、軽く言いながらボトルを私の手から奪っていく。
代わりに渡されたのは空のビールグラス。
飲んでも良いけど、せめてショットグラスのサイズにしてよ。
日本酒じゃないんだから一合は無理でしょ。
抗議の言葉を思い浮かべて口を開きかけた時にはすでにグラス一杯に酒を注がれていた。