第9章 再会
二人きりで残されても困って、皆が出ていった襖を見つめる。
「…アイツ等の事、信用してんだな。」
声に反応して前を向き直した。
「そう見えますか。」
「見える、ってか分かる。正直、妬けるね。赤葦に縋って、黒尾や月島に守られて安心した顔してるよ、お前。」
そんな自覚は全くない。
皆にも相変わらず不機嫌な時の作り笑顔以外は表情に乏しいと言われているから分からない。
それ程に些細な私の変化に気付いたんだろうか、この人は。
「俺には頼って来なかったクセに。熊野、高校ん時、イジメられてたっしょ?毎日一緒に飯食っててさ、それなりに仲良いつもりだったんだよね。俺は。
弱音とか吐くでも、助け求めるでもして欲しかった。たまに制服とか汚れてるの突っ込んで、話すチャンスやっても熊野は一度も言わなかったよな。」
「それは、上級生に頼るともっと酷くなるのが予想出来たからです。耐えて、拒まず抗わず、反応がなければその内に止むものなので。」
木葉さんの話は続いていて、その頃の自分に気付かれていた事に少なからずショックは受けた。
それでも黙る事は出来ずに頼らなかった自分なりの理由を話す。
「やっぱ、変わったよな。お前、そういう風に言い返したりしなかっただろ?同意とか否定も、一言だけで済ましてた。質問すれば、大体は答えてくれたけどな。
熊野を変えたのがアイツ等なら、少し悔しいわ。」
そう話しながら笑う木葉さんが言葉のように悔しいというよりは、悲しそうに見えて何も言えなくなった。