第1章 始まり
「そういや、お前…赤葦を知ってるみたいだったけど、何で?」
さっきから気になってたんだろうか。
唐突に質問された。
「私、梟谷学園の出身です。直接の関わりがないので、私が一方的に知ってるんです。木兎さんも有名でしたし。」
男子バレー部に憧れてた先輩もいたし、試合も見に行っていた。
そこまで言う必要はないから声にはしないけど。
「いやいや、こんな美人だったら関わりなくても有名人だろ?赤葦の方は知らなかったのか?」
「…はい、初対面ですね。」
トサカの質問に赤葦さんが真面目に答える。
その前に、美人って言葉に突っ込んで欲しいものだ。
「トサカのお兄さん、私が美人って美的感覚狂ってますね。」
自分で突っ込もうとして気付いた。
私、この人の呼び方だけ分からない。
「…トサカっ。」
赤葦さんはその人の頭を見て肩を揺らしていた。
ツボに入ったようだ。
「私、木兎さんと赤葦さんは知ってました。あの、金髪眼鏡さんも、さっきツッキーって呼ばれてたので分かります。貴方だけ知りません。」
「俺だって呼ばれてたんだけど!?なんか、その言い方、俺だけ他人みたいじゃね?つか、赤葦笑いスギ。」
「心配しなくてもきとりちゃん以外、もれなく皆さん他人です。」
きっぱりと言い返して二人から目を反らす。
話に出した親戚の帰りを待つようにリビングの出入り口を見つめた。