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第8章 いってらっしゃい


‐黒尾side‐

ホントは月島が挑発しなきゃ、俺がしてた。
コイツは多分、淋しくても泣いたりしねぇだろうし、甘えてもこねぇだろうから。
酒の所為でいい。
感情を曝して欲しかった。

まぁ、あの酒を持ち出してくんのは俺だって予想外だった訳だが。

自分の目の前に置かれたグラスの中身を舐める。
それだけで、熱い。
こんなもんを、意地になって飲まなきゃやってらんねぇくらい落ち込んでんだな。
それを、素直に見せてくれたら良いのによ。

テーブルに伏して眠るりらを部屋に連れていこうと近寄った。
その時、扉が開いて戻ってきた赤葦。

眠ってるりらを見て、一瞬だけ眉を寄せた。

「りらに、何をしたんですか?」
「僕達は何もしてませんよ。彼女が勝手に…。」
「りらが、自分を抑制出来なくなるような事しないと思うんだけど?」

月島の説明を遮る、いつもより低い声。
赤葦の、りらに対する執着が見てとれる。

だからって、聞く事はしねぇよ。
聞いたって上手く誤魔化すようなヤツだし。

「まぁ、りらだって酔いたい時もあるって事だ。赤葦、悪ィけど部屋まで連れてってやってくんね?俺も酔ってるから無理だわ。」

りらの横を空けて、赤葦に頼むと、当然とばかりに彼女を抱えて連れていった。

今はまだ、お前等の‘本当の関係’が分からねぇから泳がせといてやるよ。
だけど、センパイが大切にしてるりらに危害をくわえるようなら、そん時は許さねぇから覚悟しとけ。

つい、赤葦が出ていった扉を睨んでいた。
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