第8章 いってらっしゃい
でも、椅子から落ちる事はなかった。
グラスを持つ手を黒尾さんが掴んで止めている。
月島さんも自分が言い出した事だから慌てたのか、立ち上がって私の横に来ていた。
前の人にグラスを奪われ、横の人にはグラついて椅子から落ちかけた体を正される。
頭がフラフラとしてやっと自分が酔っているのが分かった。
自覚してしまうと急激に眠くなってきて、恥もなくテーブルに伏せて目を閉じる。
「あーあ、寝ちゃった。男の前でこんな顔を晒すの無防備としか…。」
「ツッキーがあんな挑発すっからだろ。」
「こんなお酒を持ってくるのは予想外ですよ。」
「コイツだって淋しいんだよ。酔いたい時だってあるし、無茶しようとだってすんだろ。」
二人の言い合いをする声を聞きながら眠りに落ちていった。