第8章 いってらっしゃい
その内、木兎さんが潰れて、赤葦さんはお風呂に行き、リビングには黒尾さんと月島さんと私。
何時ものパターンなら、そろそろ月島さんも部屋に戻るだろう時間になっても彼は帰らなかった。
「ツッキー、飲み足りねぇんじゃね?今日ぐらい飲めよ。」
「未成年に酒ばっかススメないでくださーい。それに、黒尾さんや、そっちのみたいに底無しじゃないんですよ。」
二人で会話、というか黒尾さんが一方的に月島さんに絡んでいた筈なのに唐突に私の方を向いた。
「私だって底無しではないです。」
否定はしたけど、ここに来て以来、大体は最後まで起きていて片付けまでしてる私が言っても説得力はない。
「へぇ…。酔った所見たコトないケド?そこまで飲んだ事はないんだ?」
挑発されているような気がした。
もっと飲め、と言われているんだろう。
普段なら乗らないけど、今日は乗ってやりたい気分になった。
明日から、きとりちゃんがいないと思うと感傷的になってしまっているらしい。
キッチンから私が来た初日に彼女が買ってきた、最強のお酒を取り出す。
グラスと共にそれを持って戻った。
黒尾さんが私の持つ瓶を見て嫌そうに口元を引きつらせたけど関係がない。
二人の前にグラスを置いて、その半分くらいまでお酒を注いだ。
自分の分は目一杯入れてグラスを持つ。
「字の如く、乾かすように飲んで下さいね。乾杯。」
強引に二人のグラスに自分のそれを軽く当てて、中身を一気に飲み下した。
前回と同様、喉が焼ける感触がする。
それを耐えて、2杯目を自分で注いだ。
もう一杯を口にしようと頭を後ろに倒した瞬間、体がグラついたのが分かった。