第8章 いってらっしゃい
何で、そんな事を思ったんだろうか。
否定を示すように首を振る。
「いえ、全然。」
ライクの意味のスキなら皆がスキだ。
ラブの好き、は誰にも向けてはいない。
私の答えに月島さんのみならず、木兎さんも赤葦さんも驚いていた。
皆が思う程、そう取れてしまう行動をしていただろうか。
一つだけ、思い当たる事があった。
「ウェディングドレスの件なら、お話した通りの事しかありませんよ。
本当に好きだったら、お芝居じゃ嫌でしょう?」
誤解が解けていなかった事には腹が立って笑顔を作る。
納得したのか、それとも私の不機嫌な笑顔が怖かったのか、三人ともそれ以上は黒尾さんについて何も聞いてこなかった。
「なぁ、じゃありらちゃんは誰が好きなんだ?」
「…は?」
数秒だっただろうけど、長く感じた沈黙を破る木兎さんの質問に不信感を表して眉を寄せた。
「だーかーら!黒尾じゃねぇなら誰が好きなんだよ?俺?赤葦?ツッキー?」
机に手を付いて私に顔を近付けてくる。
このパターンなら、大体は赤葦さん辺りが止めてくれるだろうと顔を見た。
「…木兎さん、別に俺達の誰かが好きだなんて言ってないです。」
止めてくれるタイミングが一瞬遅れたのは、答えを聞こうとしていたのだろうか。
「…ライクなら皆さんスキですけど、ラブはないです。」
期待をされていたようだし、別に困るような事はなかったから本心を答えた。