第8章 いってらっしゃい
本日の食事会は送別会も兼ねていて、そこに入るのは勿論お酒。
まぁ、約1名未成年が混ざっているけど、特別な日だから気にしない。
皆で飲みながら、わいわいと話をしていた。
「…皆にちゃんと、言いたい事があるんだ。」
騒いでいた中で小さく、それでもはっきりと通った声の主は本日の主役。
椅子から立ち上がって皆を見回した。
「私、この家も売ろうと思ってたくらいだし、誰かと食卓囲んだりする事ってもう無いんじゃないかって思ってた。
皆といれて、本当に楽しかったよ。私と一緒に暮らしてくれて有難う。」
泣きそうになりながら言うきとりちゃん。
本当は、唯一人に向けられている言葉なんだろうと気付いた。
その相手であろう人の袖を掴んで、目配せする。
本人も分かってはいたようで、立ち上がって彼女の腕を掴んだ。
「センパイ、ちょっと話したいから、いいか?」
「…え?クロ、ちょっ!」
きとりちゃんが拒否しようするのも聞かず、黒尾さんは彼女を引っ張ってリビングから出ていった。
「良かったの、アレで。」
「…何が言いたいんですか。」
「君、黒尾さんの事が好きなんデショ。」
相変わらず人の嫌な所を突こうとする月島さん。
でも、その予想は外れていて聞かれても問題がない質問だった。