第8章 いってらっしゃい
結構長い時間出掛けていたとは思ったけど、まだ誰も帰宅していない。
静かなキッチンで先程途中で止めていた調理を再開した。
料理が出来上がっても、テーブルの上に準備が整っても、誰一人帰ってくる気配はない。
最後の日だから皆でご飯食べる、って話だった筈だ。
おかしいと思って、テーブルの上の料理にラップを掛けてから家を出る。
二人がいる公園に早足で向かった。
もう夏が近付いているというのに外は薄暗くなり始めている。
公園の側まで行くと、楽しそうな声が聞こえてきた。
「赤葦ー、トス寄越せよー!」
「木兎さん、こんな所でスパイク決めたら駄目です。誰も拾えませんよ。」
「上等だ!俺に拾わせろ!」
「…下、砂地だから怪我しますよ。馬鹿なんですか?」
公園に着いて見たのは、本当に楽しそうにバレーボールをしている人達。
そういえば、この公園は駅からの帰り道だった。
結局、皆して集まってしまったんだろう。
その輪の中には彼女が当たり前のようにいて、ボールを繋いでいた。