第1章 朝焼けの声
今回の出陣は大したこと無く無事に本丸へと帰っていった。
こちら側に大きな犠牲もなく、あるとすれば刀装を壊したものがいる程度に収まった。
「さて、衣も汚れたことだ。風呂にでも入りに行くか。」
「その前に御主はぬしさまへの報告書があるでしょう。」
「それを言ってくれるな。だから隊長は嫌なんだ…。」
面倒だとごねる三日月に丁度通りがかった燭台切が茶と菓子を持ってきた。
「お疲れ様。どうだった?…って、その様子を見れば楽勝だったみたいだね。」
「おお、燭台切か。態々すまないな。」
「いや、鶯丸が茶を煎れてくれたんだけどね、僕この後ちょっと用があってさ。飲んでくれると助かるよ。」
「ほう、鶯丸が煎れたならさぞかし美味いだろう。」
部屋で装具を外しながらも、温かな湯気が立つそれは優しい香りで戦で高まる気を宥めてくれる。
「三日月、折角ですので、それを飲みながらでも早く報告書を書いてしまえばよろしいのでは。」
「そうだな、仕方ない…やってしまうか。」
「報告書か、流石にそれはサボっちゃ駄目だね。…じゃあ、服は僕が洗い場に持って行っておいてあげるよ。」
「おお、流石は燭台切、気が利くな。助かるぞ。」
手早く服をまとめてしまう燭台切の手際の良さに感心する。
「小狐丸はどうする?一緒に持っていってあげてもいいけど。」
「いや、私達の服は些か嵩張ります故、自分で持ちますよ。」
「そうか。じゃあ、三日月は頑張ってね。」
「あぁ、すぐに終らせて風呂にしよう。俺の飯は取っておいてくれ。」
鶯丸の茶に口をつけながら机へと向かう三日月に背を向ければ、燭台切と共に洗い場に向かう。
風呂と洗い場には戦に出た刀剣達が集まっていた。
私も風呂へ入りたかったがあの騒がしい中へと交ざる気分では無かったので、服だけを置いて燭台切に付いて台所へ行くことにした。