第2章 開かれぬ扉
「いつまでそうやって一人芝居を決め込むつもりだ?何を考えているかだ?それは此方の台詞だろう……三日月は好きにさせろと言うが、お前が気付かない限り変わらないだろう。」
「な、何のことじゃ……」
「お前さん、常に他の連中を避けてるだろ?最近光坊とはそれなりに話すようになったみたいだが……伽羅坊みたいに態々他人を拒む性じゃないだろうが。」
私が、拒んでいる……?
まさか、そんな。
「はぁ、自覚無し、か……まぁ、想定内だから構わんさ。」
呆れたように、さも態とらしく溜め息をついて続ける鶴丸に思わず眉を寄せる。
溜め息をつきたいのは私の筈だ。
「憶測だが、ここにいるってことは少なからずお前さんも訳アリだ。所謂新規がこの本丸に送られてくることはまずあり得ない。外で拾われた奴等はもれなく政府行きだ。……お前自身、好きでやってる訳じゃ無さそうなんでな。恐らく前のところであったことが絡んでる筈だ。」
話の展開が早すぎて、ついていけなくなっている私に鶴丸は笑いながら続けた。
「この本丸はな、所謂養護施設みたいなもんだ。訳アリがかき集められて、ここで毒を抜いて政府に還される。まぁ、現世で言うところのリサイクルみたいなもんだと思えば良い。」
「っ、ま、まてまてまて。一体何の話をしているのじゃ、全くついていけぬ……」
「まぁ、そうだろうなぁ。お前さんの頭の中は恐らく三日月の事でいっぱいいっぱいだろう。だけどな、その三日月がいない時じゃないと中々話せなくてな。」
「だからといって、今一度に話すことは無かろう。後にしてくれぬか?」
「それは聞けない話だ。いいから聞け、お前はお前の意思とは反して恐らく拒絶する物、求める物がある。理由もなくそれらの感情があるとしたら全て前の本丸が原因だと思って良い。俺もそれで最初は苦労したもんだ。」
「鶴丸が、か……?」
「あぁ、言ってなかったか?俺は前のところの記憶が全く無いもんでな。他の連中とは少し違うが、恐らくお前もその質だろうと踏んでる。」
「ならば、この本丸を好きになれぬのも私の知らぬ記憶のせいだというのか?」
「なんだお前、やっぱり嫌いだったのか。」
しまった、と思ったときには遅かった。
言うつもりはなかったが言ってしまった。