第2章 開かれぬ扉
「、当たり前じゃろうて!好いても居ない、ましてや男と恋仲かと問われて喜ぶ者があるものか!」
「なんだ、違うのか?」
「だからそうだと言っておるのじゃ!」
思わず声を荒げてしまう私に、軽く笑って見せる鶴丸に尚更腹が立つ。
何故ここまで腹を立てているのか己も理解していないが、それだけは有り得ぬと心が叫ぶ。
この私が三日月と恋仲?
想像しただけで腸が煮えくり返りそうだ。
思わず腰の本体に手を添えそうになるのを必死に堪えた。
「わかった、わかった、悪かった。お前さんがそんなに嫌がるとは思わなかった。」
「、話はそれだけか?」
「いや、三日月の居場所を恐らくだが伝えてやろうと思ったんだが、その必要は無さそうだな。」
「当たり前じゃ。彼奴が何処で何をしていようが私の知ったことでは無かろう。」
「なんだ、随分と冷たいじゃないか。仮にも負傷したお前を担いで助けた相手だぞ?彼奴も少なからず傷を負ったんだ。」
初めて聞かされる真実に言葉が詰まる。
三日月が私を助けたのは知っていた。
うっすらとその記憶も、ある。
確かに、冷静になれば鶴丸の言葉は単なる戯れに近い。
ここまで腹を立てる道理は無いように思えるが、それでも許せなかったのが現実だ。
「親の仇があるわけでも無い……そこまで嫌がるとはなぁ。逆に気になるんだが。」
「……知らぬ、頭に血が上っただけじゃ。」
ばつが悪くなって顔を逸らす。
少し冷静にはなってきたが、まだ胸の奥がムカムカする。
「いやぁ……それにしても、三日月の奴が居なくて良かったなぁ。今の見られてたら相当落ち込んだぞ。」
「、馬鹿を言うでない。今までの関係以上になることはありえぬというだけじゃ。それのどこに気をやる必要がある。」
「そりゃそうだ。なんたってあいつが望んでるのはその先だ。」
「、な……、」
ニヤニヤと、笑って私の方を見るどこまでも白く塗られた男と、先の言葉が理解出来ずに呆然とする私の間に奇妙な空気が流れた。
何が言いたい。
この男は、何がしたいのだ。
馬鹿を言うなと、先程のように怒鳴り付けてやりたいものだが何故か体が動かない。
気が付けば喉が乾いて仕方がなかった。
「そんな、嘘じゃ、嘘であろう……?」
「本当だ。そんな嘘を言ってどうする。まぁ、あいつがそれをお前に伝える気があるのかは分からないがな。」
