第2章 開かれぬ扉
「夢見、か……アイツの言ってたことはそれか……?」
独り言のように話すと一人考え込む目の前の男に今度は此方が訝しげな視線を送る。
「アイツ、とはなんじゃ……三日月か?」
「あぁ、そうだ。最近いやにお前に付きっきりだろ?まぁ、前からお前と三日月は常に一緒にいるものだと思ってはいたが、最近妙だと思ったんだが……どうだ?」
どうだ、と言われてもそんなもの知ったことか。
三日月本人に聞いてくれ、と思うのだが生憎奴は今行方不明だ。
「たかが夢ごときでそんなに心配されるようなガキでも無いよなぁ、小狐?それともそんなに怖い夢だったのか?」
嘘は付けぬが、馬鹿正直に事を説明する訳にもいかぬな。
当たり障りのないところを伝えるのが無難か。
「……以前、私が出陣で重症を負う日の朝の事を覚えておるか?」
「あぁ、俺と三日月で様子を見に行った時か……その時のことか?」
「そうじゃ、それ以来何かにつけて三日月が付いて回るようになった。確かに、心配はかけたが今はもう何ともない。単なる奴の心配性だろうて。」
「なるほどなぁ……確かに、あの時の取り乱し様は中々のものだったからな。」
「……そのようで。」
「なんだ、じゃあ俺の思い違いか。」
つまらない。
そうとでも言いたげに脚を投げ出して座り直す鶴丸に此方が思わず首をかしげる。
「思い違い、とは?」
「いやぁ、ありゃ誰がどう見てもお前さんの護衛でもしてるんじゃないかって程に三日月が付きっきりだったもんで、何か裏があるんじゃないかと探ってたんだ。」
「な、何を馬鹿な事を……。」
三日月とはいえ、何故己よりも小柄な者に護られなければならぬのだ……それも、戦場ならまだしも本丸の中でなど……。
「何か無いのか?お前と三日月の間に。」
「……と、言いますと?」
「おいおい、しらばっくれてくれるな。三日月と好い仲なのかって聞いてるんだ。」
「、なっ、突然何を言うのじゃ貴様!何故私が彼奴とその様な……!!」
馬鹿な。
一瞬何を言われているのか理解出来なかったがその言葉を理解した瞬間己の頭に血が上るのを感じる。
「おっと、そんなに取り乱すとは驚きだなぁ……。」
図星を付いてしまったかとでも言いたげな目の前の男の様子に頭が痛くなる。