第2章 開かれぬ扉
「お、思ったより素直に来たな!まぁまぁ、適当に座ってくれ。おっと、襖は閉めてくれよ?開けっ放しじゃあ流石に声が漏れるんでな。」
鶴丸の部屋へと行けばそれはにこやかに迎え入れられる。
「何、聞かれては困ることなど御主にあるというのか?」
下らない戯れ言を土産として素直に腰を下ろした。
「はっはっは、俺にだって隠し事の一つや二つあるんだがなぁ。……聞きたいか?」
「隠し事なのであろう?ならば聞く訳にもいくまいて。」
「なんだ、吊れないなぁお前は。折角俺の最高の秘密を教えてやろうと思ったんだがなぁ。なんせとっておきだ、誰もが驚くぞ!」
肩を竦めおどけて見せるこの白い男に呆れたように視線を送ればそれこそ楽しそうに笑っている。
「部屋の襖に仕掛けが無いだけで充分驚かせてもらったから良い。この部屋に入る時は毎度冷水でも浴びせられるのではとヒヤヒヤするわ。」
「冷水かぁ……そりゃデカい仕込みが必要だな。」
「冗談じゃ、真に受けるのは止さんか……私を呼び寄せたのは御主じゃぞ、話があるのでは?」
真剣に考え込もうとする鶴丸に制止を求める。
全く、明日にでも現実になりそうで気が気ではない。
私ではない誰かが餌食になれば良いのだが、と言っては反感を食らうか。
「あぁ、そうだったな。まぁ、なんだ、単刀直入に言うが……小狐丸、お前最近何を隠してる?」
「……、はぁ?」
些か素っ頓狂な声が出た。
何を言い出すかと思えば、本当にこの男はだから困るのだ。
一体何の事を言っている??
いや、どれの、と言った方が正しいか。
今朝のことは恐らく知られていない、と思いたい。
いや、まさか見られていたか?
そんな気配は無かった筈……可能性としてあるならば、やはり手入れ部屋での事だろうか。
しかし、あれは三日月と光忠しか知らぬ筈。
いや、三日月が石切丸に万が一伝えているならばそこから漏れている可能性はあるが、あくまでも可能性の話である。
「なんだ、話せないようなことなのか?」
いつまでも話そうとしない私に痺れを切らした鶴丸が不審そうな視線を送ってくる。
あぁ本当に気の短い男だ。
「いや、何の事を言われているのか分からんのじゃ…確かに、最近夢見の悪いことを三日月に大袈裟に心配されたが。」