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白花曼珠沙華【刀剣乱舞】

第2章 開かれぬ扉



「宜しければ、お手を貸しましょうか?」
「え、手伝ってくれるのかい?」
「えぇ、当然の如く御主にやらせてしまって居ますのでね。」

燭台切には随分と世話になってしまっている。
どうせ私は朝早いのだから、これくらい何とも無い。

ほぼ毎日の事だから当然であろうが、燭台切の手際の良さは感心する。
皿の用意と簡単なことだけを手伝うが、やはりこの人数分用意するのだからかなりの仕事量になる。

全てが終わる頃にはぽつぽつと飯を食いに来る者達が見えた。

「有難う、小狐丸。お陰でかなり楽だったよ。」
「礼には及びませぬ。人手が足りぬ時は呼んでくだされ。」

カブの味噌汁に焼き鮭、豆腐に菜の花の漬物と純和食のメニューは食欲をそそる。

「さて、あとはこれを渡せば終わりかな…。」
「それは……?」
「あぁ、確かに…前に言ったよね。」

主のだよ。
私にだけ聞こえる声でそう言った燭台切に、小さく心臓が跳ねた感覚がした。

何故、忘れていたのか。
ぬしさまとの、唯一の繋がり。
それは私に残されたたったひとつの希望だった。

「、宜しければ私が持っていきいましょうか。」

この時を逃してはならない。
忘れろと言われていたその事を、どうしても私は確かめたかったのだ。

「え?いいけど…何か悪いね。多分その戸を出て少しすれば来ると思うから、お願いするよ。」

すんなりと引き受けさせてくれた燭台切に感謝しつつ、私はその盆を手に持っただけで、言い様もない期待と沸き上がる感情に包まれた。

言われた通り、戸を出れば見計らったかのように、あの時と同じおかっぱの式神が歩いて来て、私の持つ盆を受け取ろうとする。
一か八か、掛けるしかなかった。

緊張からか、喉が乾いて感じた。

「…この盆を、私がぬしさまの元へ届けることは叶わぬか?」

膝をつき、視線をなるべく合わせて式神へ伝えた。
この式神が言葉を理解するかは分からないが、もうこれしか方法は無かった。

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