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白花曼珠沙華【刀剣乱舞】

第1章 朝焼けの声




声がする。

叫び声だった。
否、怒鳴り声とでも言おうか。

「、……っ!」

先程まで何か見ていたというのに。
次第に覚醒する意識と比例するかのように夢の内容は薄れていく。
あぁ、締め付けるこの胸の痛みすら忘れさせようとするのか。

「い、!…おい!!!」

耳元で怒鳴られるかのようなその声に飛び起きる程目が覚めた。

最悪の目覚めではないか、何だというのだ一体。

「おい、!大丈夫かお前!?」

何の事だ。見ての通り起きているだろうと目の前の眩しい程に白い人物を軽く睨んだ。

「…何ですか、こんな朝から……」

そこまで言って、辺りの様子に違和感を感じた。

「何だ、ただの寝坊助か小狐丸。何時も朝一番の筈のお前が飯時になっても起きてこないものだから心配したぞ。……魘されておったのは覚えていないのか?」

三日月の言葉にハッとして外を見た。
日は昇りきっている。

「全く、こういう驚きは勘弁してくれ、心臓に悪い……前みたいな事になったかと焦ったぞ。」

前、というのは私がここに来た時に一悶着あったという燭台切が言っていたことで間違いはないだろう。

「それは、私が来たという時の……?」
「何だ、覚えてるのか?」
「いえ、つい昨日燭台切から伺ったところですので。」
「そうか、光忠が……。」

鶴丸は意外そうな顔をしていた。
確かに、私は燭台切と普段からそこまで親しく話す間柄ではなかった。
三日月は昨日私が燭台切と二人で出ていったのを確認しているからか、驚いてはいないものの何やら神妙な面持ちをしている。

「…何はともあれ、御心配をお掛けした様で……」

そこまで言って、布団から起き上がる。

否、起き上がろうとした。

私の意思とは反して、上手く力が入らない体にバランスを崩した。
それを見た三日月に、布団へと体を沈める前に支えられる。

「…ちょっ、大丈夫なのかよ本当に、!!」

焦った様子の鶴丸の声。

「ふむ…酷い汗だな、やはり魘されていたのもあるか……。」

寝間着に着ていた服は汗を吸い、じっとりと濡れていた。

どうしたものだろうか。

体が上手く動かない。
特に手足に力が入らなかった。

一体何が起きたのか。

訳が分からなくなっていると、支えられた体はそのままに三日月に顔を覗き込まれた。
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