第1章 誠心誠意頑張ります。
そこまで思い出して、ふと気になった。
じゃあ、今その本丸にいる刀剣男子達は、誰の為に生きてるの…?
大切な主は傍にいなくて、少しずつ弱まる神力に体力を奪われながら、弱っていく仲間を救うこともできず、外にも出られない。
そんなの、酷すぎる…!
でも、私に代わりが務まるの?
黙り込む私を、2人はじっと見ていた。
『刀剣には、種類があると知りました。』
しばらくの沈黙の後、私は口を開いた。
『中でも短剣は種類が多くて、たくさん居るのだと。
そしてその短剣は…』
黒絹「最も脆く、折れやすい」
折れる。
それは、人間でいう死と同じような事だと、文献にはあった。
少なくとも自分の両親やおばあちゃんは、私を想って、私に思われて亡くなったのだろう。
だからこそ私は涙が止まらなかったし、辛い思いをした。
目の前で、誰を想うでもなくただ無機質に刀となる仲間の中には
折れてしまった刀も、いるのではないか?
2人ははっきり口を割らなかったけれど、可能性がないとは言い切れない。
だとしたら…私に救える命が、あるのかもしれない。
私は大切な人を失う悲しみも辛さも知ってる。
それを乗り越えて今生きている。
あぁ…、もう、道はないではないか。
たとえ見ず知らずだとは言っても、大切な人を失う悲しみは皆平等なはずだ。
だとしたら、私はそれを、無視したくはない…!
『…私の命は、誰が守ってくれますか』
黒絹さんは目を見開き、神宮寺さんは笑みを浮かべた。