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縁側で鼻歌を

第1章 誠心誠意頑張ります。


『鎖…』
悪くなる一方の展開に、私の鼓動はいやに脈打った。
ドクンドクンと耳の奥で響く心地の悪い心音を聞こえないふりをして、黒絹さんの続きの言葉を待つ。

黒絹「審神者の思いで張られた結界を解く事は、本人と、それからその本丸で過去に結界を張った者しか出来ない。
そして、此方にいらっしゃる神宮寺様こそ、本丸初代の審神者です。」

神宮寺さんが、目を伏せる。

神宮寺「私は命を全うし、少ない神力ながら刀剣男子と共に過ごした。そして後継である自らの娘に、あの本丸を任せた。
それが、あの本丸を揺るがす厄災となってしまった。」

『えっ…厄災って…?』
娘さんの身に、何か起きてしまったのだろうかと思ったけれど、聞かずにはいられなかった。

神宮寺「私の娘はね、あろう事か刀剣男子と恋に落ちてしまった。そして、刀と人では子を成せない事に嘆いて、刀剣男子共々、本丸を去ってしまったんだよ。……本丸に、他の刀剣を置いて。」

『そんな…!それじゃあ結界は…刀剣たちは…』

神宮寺「基本的に政府は本丸に司令を出す他に此方からの連絡は取らない。私が事態を知ったのは…娘が去った半年後。
報告書が来ないからと視察に向かって愕然としたよ。

無機質に張られた結界の中で、辛うじて残った刀剣男子達は門先で主である娘を虚ろな目で待っていて、その隣には同じように待っていたであろう、刀剣男子だった刀(モノ)…」

『…ひどい……』

神宮寺「すぐにでも本丸を立て直そうと新たな審神者を引き連れ、私が娘の結界を解いて新たな結界を張ってもらったよ。
けれど、娘を待っていた刀剣男子は娘に置き去りにされた事に絶望していて、とてもじゃないが円満にはなれなかった。
そして…ついにはその新しい審神者も生活を苦にして逃げ出してしまった。刀剣男子達だけではない。新しい審神者が顕現した新たな刀剣男子も、また同じように置いて…
その後何人も審神者を引き入れたが、長くても一年、持たなかった。」

黒絹「そしてその本丸こそが…貴女の勤務先、と言う訳です。」
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