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縁側で鼻歌を

第1章 誠心誠意頑張ります。


施設の作りはそれはもう豪華で、大正ロマンのドラマに出そうな木造りの和風の洋館だった。

敷かれた赤い絨毯の上にキャリーバッグを引きずるのが申し訳なくて、少し浮かせて持ち運びながら中を進む。

受付の人に通達の便箋を見せると、
これまた豪華な部屋に通された。

革張りのソファに座り、落ち着かない私に優しく微笑みかけてくれた受付の人は、無情にもお茶を置いて出て行ってしまった。



部屋で待つように言われて、どのくらい待っただろう。

勝手に飲むのは如何なものかと変に遠慮したせいで出されたお茶にも手を出せず、私は静かに待っていた。

部屋の外が騒がしくなってきた。
声はだんだん近づいてきて、ドアが開かれると同時に聞こえたのは

「デビューにそれはあんまりです!」

と、狼狽した男の人の声だった。

何がなんだかわからない私は、とりあえず不穏な空気を感じつつも入ってきた2人を見やる。


「やあ、待たせたね。君が椎名美月さんかな?」
和装のよく似合う、杖をついたおじいさんが声を掛けてきたので、私は立ち上がりお辞儀をする。

『はい!椎名美月です、よろしくお願いします。』

「ふふ、可愛らしいお嬢さんだ。私は神宮寺 道影、よろしく頼むよ。」

「…黒絹 宗治です。あぁ、こんな礼儀正しい子を…」
苦々しい顔をしたメガネの男の人、もとい黒絹さんの発言が気になって、どういうことかと問おうとしたところで神宮寺さんが口を開いた。


「椎名さん、君には2つ、言うべきことがある。」
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