【マギ】 ジャーファル、あなたのために。~亡国の姫~
第30章 ハッピーエンド
セリシアside
「セリシアさん。これどうぞ。」
そう言って渡されたのは飲み物が入ったコップ。
甘い香りのする。
「ありがとう。・・・これココア?」
この味、香り。
ココアだと思うけど・・・なかったよね?
「はい。初めて作ったので、試行錯誤しましたけど。」
「え・・・。作ってくれたんだ?」
「はい。前に好きだって言っていたでしょう?」
覚えててくれたんだ・・・。
それが嬉しくて、よりいっそう気持ちが高ぶった。
「ここ、ホントいろんなことがあったよね。」
国の風景を見ながら話す。
今日はいつもより夜なのに明るくて、騒がしい。
「ええ。海賊事件の後ですね。夜中にここで会ったのが最初。あの時は驚きましたよ。髪を下してたからか、人じゃないものに見えたくらいです。」
「えー。人じゃないって、何よ?」
「女神です。」
あっけにとられるというか、なんというか。
そんなさらっと言える?
「女神って・・・。比喩表現が過ぎてない?」
「いえ、本当にそう見えたんですよ?それだけ、神秘的な雰囲気をまとってたんです。」
神秘的、ねー。
「その後も時々あって。それでこの前、ここで私が倒れたんですよね。」
「ホントに、怖かったんだよ?急に倒れるし、目を覚まさないし。」
あんな思いはもう二度としたくない。
「・・・ご迷惑を。もう二度とあんな風にはなりませんよ。」
「うん、ならないでね。もっとも、呪術なんてめったに出会わないだろうけどね。」
「それは言えてますね・・・。」