【マギ】 ジャーファル、あなたのために。~亡国の姫~
第28章 助けたい想い
ジャーファルside
「・・・。」
沈黙が続いた。
張りつめた空気。
デアルさんはシロナさんの話に返事をしない。
どういう方法なのかわかりませんけど、そんなに悪い話とは思えない。
『・・・ああ、ごめん。』
私達シンドリア組の視線に気づいたのか、こっちを見て謝る。
『我ら二人で旅してる時、ちょっと盗賊にあってね。その時、デアルの魔力が切れたから我の力を貸したんだ。そしたら、その盗賊を不本意に皆殺しにしてしまったことがあるんだよね。・・・だからデアルは我の力を使おうとはしない。』
そういう過去があったのか・・・。
それならば、悩むのもわからなくはない・・・けれど。
その話には部外者にあたるからあまり口出しはできない。
でも。
「・・・デアルさんは、何を守りたいのですか?」
デアルさんが一番大切にしているものがなんなのか、私は知りません。
「名誉ですか?地位ですか?それとも…プライドですか?…それなら、この場を去ってください。そんな人にここにいては欲しくないのです。」
そんなものが大事なら、人の命に涙を流してほしくない。
この場にいてほしくもない。
「俺が守りたいのは・・・。」
誰もが見守る。
少し迷ったようにも見えたが、すぐに覚悟を決めたらしい。
「なんで今考えたのかな。決まってる。今はもうただ一人の大事な妹だ。」