【マギ】 ジャーファル、あなたのために。~亡国の姫~
第5章 「ボクの頼み」
ジャーファルside
試合が始まった。
負けないでほしいという思いがなぜか残る。
なぜ??
身の上すらしらない男を食客にしないためにも、勝ってもらってはいけないというのに。
しかも負けてもケガ一つしないはずの戦い。
どうして・・・。
「はぁぁ!!」
だが、そんな考えは試合を見ていたら何も感じなくなった。
ヒュンヒュンッッ!!
風の音しか聞こえない。
それも、早すぎてみるのはつらい。
足音とか、掛け声とかも、何もない。
そして、その風の音はすぐにとまった。
「・・・あのー。」
勝負は終わっていた。
セリシアが国兵の剣士を抑えているのだ。
それも片手で。
もう片方の手では自分の剣を兵士に突き立てて。
「や、やめ!!」
驚きすぎた。
誰もが何も言えなかった。
「・・・えーと、ありがとうございました。」
すっと立って兵士に礼をしてシンの前に行くセリシアさん。
兵士も、驚いて立ち上がれていない。
今のは、なんだった??