第12章 5th Night 【シリウス・オズワルド】※R-18
「悪い奴らじゃないんだけどな…」
「それは…十分分かってます」
その言葉を聞いたシリウスは、ふっと息を吐いて安堵の表情を浮かべた。
「そりゃあ良かった…」
食事が終わり、リベンジで淹れなおした紅茶と、ルカ特製のチーズタルトが出される。
「うわぁ…これも美味しい」
コクがあるが重たくない、さっぱりした味わいだ。
「ルカ、ほんと天才」
「明後日からは毎日食べられるぞ」
「それがすっごく楽しみ…!」
レイアは満面の笑みを浮かべる。
「…ごちそうさまでした!」
「お嬢ちゃん…けっこう食べるんだな」
シリウスは少し驚いた顔をしながら、手際良くあっという間にテーブルの上を片付けてしまった。
「あ、シリウスさんありがとうございます」
「あー、いいって…慣れてるから」
シリウスはそのままお皿まで洗ってくれている。
「おーそうだ、お嬢ちゃん」
「?」
シリウスは皿を洗いながら、背中で声を掛ける。
「もう、風呂も準備してるんだ。よかったら入ってくれ」
「えっ…」
いつもは赤の兵舎ですべて支度をしてからここに来ていたが
今日は確かにセントラル地区へ出かけてしまったせいで時間がなく
お風呂には入ってきていなかった。
(そう言われてみれば…ちょっと入りたいかも)
「じゃ…じゃあお先に使わせてもらいます、ね」
「おう、そうしてくれ」
…シリウスは、とても優しく落ち着いているが
今までここを訪れた誰よりも
男の欲のようなものを感じさせない。
もしかして今日もこのまま、何もせず終わるんじゃないか
そう思ってしまうような、包み込むような優しさと余裕を感じる。
(そんなわけはないって分かっているけれど…)
バスルームへ入ると、バスタブに張られたお湯からは、花のいい香りがした。
(うわぁ…癒される……)
少し熱めのシャワーを浴びて身体や髪を洗うと
香り立つバスタブの中へゆっくり身体を沈めていった。
「ふわぁーー……」
思えば今日はいろんなことがあった。
ヨナとランスロットの話を聞き、セントラル地区へ飛び出し、
セスとルカに会い、一緒にカフェに行き、
戻ると赤の橋の上…。
ヨナから受けた口づけの感触を思い出し
レイアがそっと唇を撫でたその時。
ガタン。