第12章 5th Night 【シリウス・オズワルド】※R-18
マッシュポテトにブロッコリー
香ばしい香りのポークソテーにパンが添えられている。
「わ…今日もすごい…」
「悪いなお嬢ちゃん…お茶はきっと俺の方が淹れ方が下手だと思うからやってない」
「あ、やります!」
レイアはいそいそとキッチンへ向かい、お茶の準備をした。
「そういえば今日セスとルカに会ったって?」
「あ、はい…パンケーキをご馳走になっちゃって」
「なんかすごくルカの機嫌がよかったぞ」
「え?ルカが?」
ルカの機嫌が良くなるようなことがあったか思い当たることがなく、レイアは首をかしげた。
「…ん、なんだろ」
「俺もよくわかんねえけど…単にお嬢ちゃんのこと、気に入ってるんじゃないか」
「えっ……」
意外な言葉にレイアは手元が狂う。
「熱っ……」
「おい、大丈夫か」
お湯を注ぐ瞬間に少し手元にかかってしまい、思わず声を上げてしまう。
飛んできたシリウスは、レイアの手をとる。
急に距離が近くなったシリウスからは、ふわっといい香りがする。
「ここか」
「あ、はい…」
赤くなった手元に、シリウスは手際よく水を含ませた手ぬぐいを当てて冷やす。
「ごめんなさい、うっかりしてて…」
「大丈夫、気にするな。それより…平気か?」
レイアはこくんと頷く。
「そうか、よかった」
シリウスはふっと微笑んで、ダイニングの椅子に座るようレイアを促した。
「お嬢ちゃん、とりあえず食べよう…な?」
大人びた風貌に反して、無邪気な笑みを見せたシリウスは
レイアの向かい側に座ってそう言った。
相変わらず絶品の『ルカ飯』を食べながら
二人は他愛もない話をしていた。
「赤の兵舎はどんな雰囲気か分からないが…うちはフェンリルとセスがいるからとにかくやかましい…お嬢ちゃんが落ち着いて生活できるといいんだが…」
フェンリルとセスが喧嘩仲間、それを仲裁するのがシリウスさんかルカ。
レイとフェンリルは相棒で悪友。タイマン勝負することも度々あり、それを寸止めで仲裁するのもシリウスさんの役目。
「シリウスさんがいなかったら、収拾つかないんですね」
「まぁ…そうだな」
「…今晩、大丈夫でしょうか」
「俺もそれが一番気がかりだ」
二人は顔を見合わせ笑った。