第11章 DAY5 単独行動
ヨナは勢いよく兵舎を飛び出した。
焦りが全身に嫌な汗となって広がる。
数刻前のカイルの言葉が本当なら。
「あー、ヨナ。なんかアリスのやつ、真っ青な顔して走っていったぞ?」
庭を駆け抜け、門番の兵のところへさしかかる。
「あれっ…ヨナ様…」
敬礼も忘れ門番が驚いた顔をする。
「…もしかして、アリスがここを通らなかった?」
「……はい、かなり前ですが…でもヨナ様をセントラル地区で待たせている、とおっしゃって走って行かれましたが…」
「……っ」
ヨナは舌打ちをして、そのまま飛び出していく。
あっという間に赤の橋へたどり着く。
日が傾き始め、オレンジ色を帯びてきた。
(レイア……いったいどこに…)
赤の橋を渡り、セントラル地区へ向かおうとしたそのときだった。
「………レイア!!」
赤の橋の向こう。セントラル地区側から、歩いてくる人影を見つけ、ヨナは叫んだ。
「…ヨナ」
ヨナはレイアの元へ走った。
乱れた息のまま、ヨナはレイアの両腕を掴む。
「どうして一人で勝手に出ていった!!」
「………」
レイアは眉根を寄せてヨナを見上げる。
ヨナはレイアを責める言葉を浴びせながら
顔は切なげにゆがめていた。
「何があるかわからないんだよ…?君は特別な力を持っている…誰に狙われてもおかしくないんだ!」
悲しげに揺れるヨナの瞳が、レイアの胸にも切なさを落としていく。
「ヨナは、私がアリスだから心配しているの?」
「えっ…?」
ヨナの瞳が見開かれる。
「私に…赤の傘下に入ってほしいから優しくしているの?」
ヨナは「やっぱり」というような表情で目を伏せた。
(ランスロット様との会話を、聞かれていた)
長い溜息を吐いて、ヨナはレイアを見つめる。
「いいかいレイア…俺は誇り高き赤のクイーンだよ」
ヨナとレイアはまっすぐ見つめ合う。
「俺は赤の軍、そしてわが主ランスロット様のために忠誠を誓っている」
昼間の会話が再びレイアの胸を締め付ける。
「でもね、レイア」
琥珀色の瞳が迫る。
「……自分の意思に嘘をつくような行動は決してしない」
「えっ……」