第11章 DAY5 単独行動
さんざんお互いのパンケーキを味見し合った後、
紅茶を飲みながらセスが切り出した。
「ところで…どうしてアリスちゃんは今日一人なの?」
「…あ……」
レイアの顔が固まる。
「あの赤のクイーンがあなたを一人で野放しっていうのはちょっと考えられないんだけど…」
「………勝手に、出て来ちゃった?」
ルカの言葉にぴくっと肩が揺れる。
「……図星」
気まずそうにレイアはルカへ視線を投げる。
「アリスちゃん…確かに赤の軍は傲慢ちきな赤のクイーンやら不気味なジャック、酒臭い医者…居心地の悪い場所なのは良く分かるけど…」
一通りディスりながらもセスは真剣に続ける。
「勝手に出て来ちゃったら…さすがにみんな心配すると思うわよ?」
「……わかってます」
俯くレイアにルカが問う。
「……あいつと、何かあった?」
ルカがいう「あいつ」とは、多分ヨナのことだ。
レイアは立ち聞きしてしまったヨナとランスロットの会話を二人に打ち明けた。
「……それは傷つく!女子はそういうのほんと傷つくわよね!!やっぱり女の子の扱いが分かってないわね赤の軍は…!!」
セスは苛立つようにため息をついた。
しかしルカは少し違っていた。
「……レイア」
「…?」
ルカは真剣な顔をしている。
「……あいつは…すごくデリカシーのないことばかり言ってくる本当にうざい奴だけど…演技で優しくできるほど器用じゃない」
「……!」
はっとなってレイアが目を見開く。
「信じられないほど不器用な人間だよ…だから、もしあなたが優しさを受け取ったのだとしたら、そこに嘘はないと、思う」
「ルカ……」
ルカは僅かに口角を上げてうなづく。
「……あいつ、かなりバカだけど、きっと心配してる」
「…うん……ありがとう、ルカ」
「アリスちゃん」
セスが声を掛ける。
「送ってあげられないけれど、ちゃんと戻れるかしら?」
レイアは黙ってうなづく。
セスはレイアの頭をぽん、と撫でた。
「明後日からよろしくね。あなたのお部屋、とびきり可愛くして待ってるわよ!」
「…はい!」
レイアは満面の笑みを浮かべ、二人に別れを告げた。