第11章 DAY5 単独行動
「今日は午後から時間がある。君がどうしてもというならまたセントラル地区へ連れていくよ」
朝一番、レイアにそう言い放ったヨナは
いつもの高飛車なヨナに戻っていた。
(昼食は終えたけど、ヨナどこかな…)
レイアはヨナを探し、兵舎の中をうろうろしていた。
ちょうどランスロットの執務室の前を通りかかった時
中から声が聞こえる。
「ヨナ、先日の件だが」
ランスロットの声。ヨナがいるようだ。
(あ、仕事の話かな)
レイアは自然と部屋の前で足をとめた。
「はい…ランスロット様」
「アリスとの仲はどうだ?順調か」
「……はい」
順調か、というランスロットの問いに、なぜか昨夜のことを思い出してしまう。
「良いか。アリスの身辺の世話をさせているのは他でもない、アリスが最終的な『主人』としてお前を指名し、結果的に赤の傘下に取り込むためだ」
(えっ……)
「そのためには『抱く』以外の方法でアリスの心を掴み、籠絡する…分かっています…我が主」
(………)
レイアは言葉を失う。
全身に冷たいものが流れ込む感覚が広がる。
「籠絡するのには…お前が適任だと踏んだが…俺の判断は間違っていなかったか?」
「はいもちろんです…ランスロット様のため、アリスの心も身体も、必ずやわが手中に収めてみせます」
(……もう、無理)
レイアは気付けば走り出していた。
1秒でも早くその場を去りたかった。
ヨナに会いたくない。
(ヨナが今まで優しくしていたのは…私を赤の傘下に入れるため)
頭の中がぐちゃぐちゃになり、何も考えられない。
ただ、さきほどのランスロットとヨナの会話だけが頭にこだまする。
「あれー、アリス、どこ行くんだ」
廊下ですれ違うカイルの声も届かない。
「…アリスー?」
レイアはそのまま玄関口におり、外へ出る。
庭を抜け、門まで走ると
門番の兵士に声を掛けられた。
「アリス様、どちらへおいでですか」
肩をびくりと揺らし、レイアは答える。
「……ヨ、ヨナと待ち合わせしているの…待たせると怒られてしまうから…」
「そうでしたか。お気をつけていってらっしゃいませ」
レイアは赤の橋目指してまっすぐ走った。