第11章 DAY5 単独行動
早朝。
黒の兵舎前では、シリウスが花壇に水をやりながら
剪定をしていた。
「おはよ」
「あぁ、レイか…おはよう。昨日はお疲れさん」
シリウスは背後からやってきたレイに答えて、再び花の手入れを始める。
「…さすが早起きだな。おっさんは」
「おい」
シリウスがじろりと睨む。
「なぁ、シリウス」
「ん?何だ?」
「今日……頼む」
レイの言いたいことをシリウスは汲みとる。
「わかってるよ…お嬢ちゃんを傷つけるようなことはしない」
シリウスは目の前の花がアリスであるかのように
優しく愛でながら水をやる。
「……おっさんだからな…危ねえ」
「だからレイ、おっさんって言うな」
「まぁ年齢的に朝までなんて暴挙には出れねーな」
「その言い方もやめろ、ムカつく」
二人は顔を見合わせ、どちらともなくぷっと吹き出す。
「ところでレイ、明後日からお嬢ちゃんはうちに来るんだろ?部屋、用意しないとな」
「ああ…そうだったな」
レイがふっと思案するように空を見上げると
「はいはいはーいっ!!アリスちゃんの部屋は、このアタシに任せて?!」
後ろからハイテンションの声が飛んでくる。
「ん?何か足りない備品でもあった?」
レイはセスに向かって尋ねる。
「あのねぇ?!女子がこんなむさくるしい兵舎のつまんない部屋に何日も過ごすなんてありえないわよ!拷問よ!!もっと可愛いお部屋にしてもてなしてあげなきゃ…ゼッタイだめ!!」
「まぁ確かに…居心地良く過ごしてもらう方が後々有利にはなる」
シリウスも真面目にうなづく。
「そうか…」
レイは少し沈黙し、そして口を開いた。
「じゃあセス、ルカと一緒に今日はレイアの部屋の準備を頼む」
「オッケー!任せて!」
浮足立って兵舎に戻ろうとするセスの背中にレイが再び声を掛ける。
「セス」
「ん?なぁに??」
「……レイアの部屋は、お前の部屋から一番遠いとこ、な」
無言で振り返るセスの不満げな顔を
レイはせせら笑って受け止めた。