第10章 4th night 【レイ・ブラックウェル】
「レイは……セスのことを謝って、ゆっくり休んで、と言って帰りました……でも」
ブランはレイアの手を握りながら優しく頷く。
「一人でここに取り残されたら……とても寂しくて…。私、儀式が嫌だと思っていたのに……」
「……レイに、残っていてほしかった?」
レイアは黙ってこくりと頷く。
「私、抱かれたかったんでしょうか…?」
「それは…僕には分からないけどね…でももし、君がレイと抱かれることを望んでいたとしても…」
ブランはにっこりと微笑んでレイアの頬を撫でる。
「僕はそれを否定したりしないよ…とても愛らしくて、美しいと思う」
頬を撫でたブランの手に、温かい涙が触れる。
「レイになら、赤の軍が主人になった後に昼間会うこともできるし…それに……」
ブランの親指がレイアの目尻を優しく拭う。
「……最終日に指名することも出来るからね?」
「………っ!」
レイアはうるんだ瞳のまま、顔を染めた。
「もちろん…レイ以外の誰かを指名してもいいし、それは君の自由だよ?………さて」
ブランは居直り紅茶を少し飲むと、すっと立ち上がった。
「レイの意思を汲んで、今日は君に休養してもらおうと思うんだけれど、ここで一人で過ごすのは望んでいないみたいだね……君は、どこでどう過ごしたい?」
「えっ……」
予想外の問いかけに、レイアは目をぱちくりさせる。
「黒の兵舎以外ならどこでも連れていけるよ」
「…………」
ブランにそう言われた時に
レイアの頭の中に、真っ先に思い浮かんだのは一人だった。
「ブランさん……お願いします……」
その答えを聞くと、ブランはにっこりと笑い
「では馬車で送るよ。おいで?」
そう言って、玄関へと促したのだった。