第2章 イントロダクション【ブラン・ラパン】※R-18
ブランが説明を終わったとほぼ同時に
馬車がゆっくり減速し止まった。
「着いたようだね」
ブランは先に馬車を降り、レイアをエスコートした。
「……ここは」
うっそうと生い茂る森の中
そこには小さな家があった。
庭先にある小さな街灯がぼんやり灯っているだけで
あまり良く見えないが
こじんまりしていても
温かみのあるかわいらしい外観のようだ。
「ここが月小屋だよ。さぁ…おいで、レイア」
ブランのふわりとした笑みにいざなわれる。
差し出された手を、取るという選択肢以外残されていない。
レイアは恐る恐るブランの手を取り
月小屋と呼ばれる家の中に入っていった。
月小屋の中は
意外にも温かみのある落ち着いた作りになっていた。
家具や絨毯など、派手ではないが質の良いものが並んでおり
レイアの不安な気持ちを消してくれる雰囲気があった。
赤やピンク、オフホワイトが基調となったファブリックに
思わずレイアは声をもらす。
「かわいい…」
「気に入ってもらえてよかった」
ブランはほっとしたように言う。
そして僅かに眉根を寄せ、憂いを帯びた目をすると
「…これから毎夜、君にはここで『宴の儀式』をしてもらうから…せめてこの場所を居心地のいい場所に感じてほしかったんだ」
「…儀式」
レイアに再び、大きな不安の波が押し寄せる。
嫌な予感がする。
先ほどからレイアは妙な違和感を感じていた。
普通の家の構造と少し違うのだ。
玄関があり、キッチンやダイニング、バスルームがあるが
リビングに該当するスペースには
妙に大きいベッドが鎮座している。
とても質の良さそうなシーツやクッションがふんだんに敷き詰められているが
その大きすぎるベッドが部屋の真ん中にあるのが
激しい違和感と大きな不安をレイアに与えていた。
これから
毎夜行われる『儀式』
レイアは記憶の糸をたどる。
今夜が「イントロダクション」
明日以降6日間、黒の軍が月小屋の主人
(まさか)
「ブランさん……それで、儀式っていうのは何なんですか」
レイアがそう尋ねた瞬間
「あっ……!!」
ブランはレイアの身体を抱きあげた。