第2章 イントロダクション【ブラン・ラパン】※R-18
ブランはガーデンを降りて公会堂を出ると
入口に用意してあった馬車にレイアをエスコートした。
すると馬車はゆっくりと動き出した。
「あ……あの…」
レイアは恐る恐る、向かいに座るブランの顔を見上げて口を開く。
「レイア、怖い思いをさせたね…本当にすまない」
ブランはとても自然な流れでレイアの頬をそっと包み込んだ。
「あ、いえ…その…」
顔を赤くしながら目を泳がせるレイアにブランはふっと微笑みを落とす。
「…月小屋の宴、というのは…あちらの世界から来た『アリス』に課せられた特別な儀式なんだ」
「特別な…儀式?」
ブランは頷いて続ける。
「この国の全てのエネルギーは『魔宝石』と呼ばれる、魔法の力によって動いている。魔宝石がなくても魔法の使える特異体質の人間もいるけれど、多くの人間は使えない。
よって魔宝石の力を借りている」
「魔、宝石…」
電気や蒸気のようなものだろうか…レイアはにわかに信じがたいその言葉を理解しようと思案する。
「…なぜか、あちらの世界から来た『アリス』には、魔法を弾く力が備わっている。それは、両軍にとって喉から手が出るほど欲しい存在なんだ」
「…つまり私が、魔法を弾く力がある、ということですか」
ブランは微笑みを落とし、続きをゆっくり話し始める。
「でも『アリス』は一人…どちらかにつく、というのは不公平だよね?」
言われてみればそうだ。レイアは頷いた。
「…そこで、両軍が公平に『アリス』の力を得ることのできる『方法』を見つけることに成功したんだ。
その儀式を『月小屋』と呼ばれる館で行い、両軍公平に『アリス』の魔法の力を得る」
レイアはその『方法』が何なのかが気になりながらも、先を知りたかったので黙って聞いていた。
「公平に力を得たうえで、アリスには『真の主人』を選んでもらう…その主人は次の満月までアリスを『独占』することができるから…」
「ど…独占…?」
「必然的に『主人』に選ばれた軍が優勢になるね」
「……」
「それを以って勝敗を決めるのか、武力で決めるのかは両軍のキングが決めることだけれど…以上が『月小屋の宴』の概要かな」