第10章 4th night 【レイ・ブラックウェル】
ルカの作ってくれた夕食は
いつも以上に美味しく感じた。
「これだけ作るの、大変だったよね」
「…セスとシリウスも手伝ってた」
(あ、セスさん…)
ふと昨晩のことが頭をよぎる。
「……セスも、申し訳なく思ってたよ」
「え…?」
レイアの目には
セスは楽しんでいるように映っていたし
それがセスの性格だと思っていたので
まさかセスが自分に対して申し訳ない気持ちがあるとは思いもしなかった。
「…ルカも、お前のこと心配してたらこんなに作っちまったって…」
「ルカが…」
(やっぱりルカは…優しいな)
ルカのことを思い出すと
なぜか情事のことよりも、柔らかい笑みを思い出してしまう。
「この料理に免じて…とはとても言えねーけど…あいつらの気持ち、少しだけでも分かってやってほしい」
「レイ…」
レイが仲間を思う気持ちも、痛いほど伝わってくる。
(やっぱり、この気持ちを伝えたくてレイは来てくれたんだな…)
…二人は、他愛もない話をしながら
あっという間に料理を平らげた。
食後のパウンドケーキを食べ、紅茶を飲みながら
レイが切り出した。
「……今日はこれで帰るよ」
「…えっ?」
予想もしない言葉に、レイアはカップに伸ばした手を止めた。
レイはふっと笑って続ける。
「…そもそも、黒の軍は魔法の力を戦闘で使うつもりはねぇ。儀式上、両軍の均衡を図るために参加はしてるが…アテにはしてねえんだ」
「そ…そうなんだ……」
そもそも相手に自分の力を分けている感覚もなかったため
レイアはきょとんとして話を聞く。
「それに……俺はもともと…使えるんだ」
「え?」
「……魔法」
「………ええっ?!」
(もともと魔法が使える人もいるって、確かブランさんは言ってたけど…)
目の前にいる人が、そうだと聞かされると
不思議な気持ちになる。
「……これ、秘密な」
「え、あ…うん」
(そうか…もともと使える人はもらう必要がないから…)
赤の軍のランスロットも同様のことを言っていたことを思い出す。
「セスに相当無理させられただろ?今日くらい…身体休めてやりたかったから…」
そう言うと、レイは突然
テーブル越しにレイアの髪をそっとかきあげた。
(えっ…)