第9章 DAY4 黒き反省
ふと、バスルームの方から湯気が沸き立っていることに気づく。
(あれ?お風呂…?)
ベッドから降りてバスルームの方をのぞこうとすると
「…わっ!!!」
ダイニングテーブルに人の気配があり、思わず声が出てしまった。
(……ヨナ?)
赤の軍の軍服を着た、浅緑の柔らかな髪。
テーブルに突っ伏して、眠っている。
「……ヨ、ナ…?」
ヨナは本当にビスクドールのようで
その美しく整った寝顔にレイアは目を奪われた。
「……んん…」
ヨナの長いまつげが僅かに揺れて、ゆっくり目を覚ます。
「…レイア」
琥珀色の瞳が、レイアの姿を捉える。
「ヨナ…おはよう…」
「……!!」
ヨナはパチッと目を覚まし、飛び起きる。
「レイア!大丈夫なの?!」
「え?何が?」
佇むレイアの両腕をがしっと掴む。
「ひどいこと…されなかった?」
「え?…えっと」
「あの怪力オカマ野郎…下品極まりないよ…朝までつき合わせるなんてプライドのかけらもないんだな…」
(……あ、もしかして…)
「ヨナ…セスさんと会ったの?」
ヨナは忌々しげに答える。
「ああ…早朝君を迎えに来た時にちょうど、ね。まったく腹立たしいね…黒の軍は野蛮すぎるよ。さ…レイア」
ヨナはバスルームを指差す。
「この俺が特別に君のためにお風呂を用意したからね…普通こんなことは、たとえ恋人がいたとしてもしてあげないんだから…感謝しなよ」
「え…ヨナが用意してくれたの?」
「……当たり前だろう?さっさとあの忌々しいオカマ野郎の痕跡を綺麗に消してきなよ」
ヨナは少し顔を染めながら、レイアを直視せずに言う。
「……ほら、早く入って。この辛気臭い小屋からさっさと出るよ?」
「……ありがとう、ヨナ」
レイアは胸の中に温かい気持ちが流れ込むのを感じ
花の香りの漂うバスルームへと足を向けた。