第9章 DAY4 黒き反省
「…貴様……っ!」
ヨナの燃えるような目線を受け流し、セスは再びオネェに戻る。
「さぁてと、アタシはこれで帰るけど…喧嘩売ってるヒマがあるなら、早くアリスちゃんのところにいってあげたら??意識ぶっとんでベッドに倒れてるわよ?」
「……!!」
セスは妖しい笑みを浮かべると、そのまま馬を走らせ、霧の中へ消えていってしまった。
「……レイア…」
ヨナは月小屋の中へと急いだ。
(……君って子は…どうして……)
薄明るい月小屋の中は
酒の匂いと一緒に、情事の匂いを含んでいた。
ベッドのそばにだらしなく散らばるレイアの服。
乱れたシーツとクッションの中に
滑らかな素肌を晒し、横たわるレイアの姿があった。
「…レイア」
さんざんセスにいたぶられぐったりしているはずなのに
ヨナはレイアの身体が描く曲線の美しさに、見惚れてしまう。
うつぶせた彼女の背中に乱れて広がる髪も
背中から腰元、双丘にかけての曲線も
白く肌理(きめ)の整った手足も
全てが神々しいように感じた。
初めて会った時からまだ3日と少ししか経っていないというのに。
(彼女は…こんなにも……)
美しく、妖艶だっただろうか。
理性のたがが外れないよう必死に耐えていても
その髪や肌に触れることをどうしても抑えられそうにない。
「レイア…」
ヨナは眉根を寄せ、苦しそうな表情のまま
すやすや眠る美しい女神の髪をひと房すくい
唇を落とした。
霧が晴れ、すっかり明るくなった部屋の中。
差し込む朝日のまぶしさに、レイアは目を覚ました。
「……んん…」
曖昧な記憶の糸をたどっても、最後どうなったのかどうしても思い出すことができない。
ちょうどベッドの位置から花が見える。
(……ああ、ヨナがくれたブーケ)
ベッドから見える位置に飾ったのは他でもない自分だ。
まだらな記憶の中、セスにぶつけられた激しい欲情を受け止めながら
視界の隅に時折映り込んだ可憐なブーケの残像を
レイアはゆっくり思い出す。
「……」
ゆっくり身を起こすと、身体にガウンが掛けられていたことに気づく。
(セスさん…かな)