第7章 DAY3 クイーンとのデート
「あ……こ、こんにちは」
(そっか、中立の地区だから黒の軍のみんながいてもおかしくないよね)
戸惑うレイアをよそにフェンリルはヨナを睨みつける。
「赤のクイーンがレイア連れまわしてこんなとこで何やってんだよ」
「連れまわす?失礼なことを言うな。レイアが息抜きをしたいと泣いて懇願するからこの俺自らセントラル地区を案内してあげているだけだ」
まったく素直さのかけらもない口調に、ルカは大きなため息をつく。
「ルカ、どうしてこんな奴らと一緒にお茶なんか飲めるんだ。せっかくここで会ったのだから兄様と一緒においで」
「やだ」
ルカは荷物を持って立ち上がる。
「…行こう」
目も合わせずにルカはその場を去ってしまった。
(ルカは…ヨナのこと嫌ってるみたい)
ルカは一瞬レイアの方を見て目を合わせる。
(あ…)
ほんの一瞬だけ、ルカが微笑んだようにレイアには見えた。
「ちょっとルカ!待ちなさいよぉ…あ」
セスはルカを追おうとしてレイアの方を見やる。
「アタシ、セス!今晩お邪魔するからよろしくね、アリスちゃん!」
「えっ?あ……はい…」
その口調としぐさで、フェンリルの言っていた『怪力オネエ』を思い出す。
(この人だな…)
フェンリルは別のところへ行くらしく
「じゃあな、レイア!」
軽いノリで挨拶して去っていってしまった。
「まったく何なんだよあいつらは。俺の大事なルカがあんな風になるのもあいつらの影響に違いないよ…」
ヨナは一人ぶつぶつ文句を言いながら、去っていくルカとセスの背中を見つめていた。
少し、寂しそうな色を宿した目だ。
「……さて、レイア」
ヨナはレイアの方を振り向く。
「君はさっきから洋服も宝石も靴も何もいらないって断ってばかりだけど、一体何が欲しいの?」
セントラル地区の高級店を総なめにしてレイアを呆れさせたヨナは、なおも「プレゼント」をしようとたたみかける。
「………はぁ」
「ちょっと、君までどうしてルカみたいにため息つくんだよ」
ルカの気持ちが少しだけ分かる。
「欲しいもの…」
ふっと思いついたレイアは
ヨナにそっと耳打ちした。
「……え?」