第6章 2nd Night 【ルカ・クレメンス】※R-18
「あ、そういえば昨日の夕食も、すごくおいしかったよ。ありがとう、ルカ」
「…うん。……あれ、これは」
ルカはお茶の準備をすると、テーブルの上に置かれたビスコッティを見つける。
「あ…これ、今日私が作ったの。良かったら食べて?」
「あなたが?」
ルカは驚いた様子でビスコッティを見つめていた。
「あなたは…本当に優しいんだね」
ルカがテーブルについて、二人は夕食をとり始めた。
「私はね、元の世界でお菓子屋さんで働いていたの。だから甘いものが好きで…昨日とても美味しいデザートが食べられて本当に心が落ち着いたよ」
「…そう」
ルカは頷きながらサンドウィッチを食べ進める。
「今度……黒の軍の兵舎でお世話になる時に、作り方教えてくれる?」
「……もちろん」
ルカは本当に大人しい。
言葉数も少ないし、表情もあまりはっきりと出てこない。
ただ、優しさに満ち溢れていることだけは伝わる。
(フェンリルの言ってた通りだ)
大人しいけど優しい。
……そんなルカと、どんな夜枷が始まるのか
レイアはまったく想像することもできなかった。
(あまりそういうこと好きじゃなさそうだし…もしかしたらナシ…ってことは…ないか)
紅茶を飲むルカの顔をついぼんやり見つめてしまうと
訝しげな顔をしてルカが尋ねる。
「……何」
「えっ…?あ……ごめん、なんでもない」
「ねぇ…あなたは」
ルカは言葉を選ぶように視線を泳がせ、そして顔を上げてまっすぐ見つめる。
「あなたは…今どんな気持ち?」
「……え?」
どんな気持か…その質問の意味が分からず、レイアは首をかしげる。
「えっと…」
「…つらくはないの?」
ルカの目は憂いを帯びていた。
その目つきも、どこかで見覚えがある気がする。
「つらくないと言えば嘘だけど…私が逃げたら戦争になってしまうから」
ルカはぱっと目を見開く。
「あなたは…この世界のことを案じてくれているんだね」
「…もちろん」
淹れてもらった紅茶を一口飲んでレイアは続ける。
「皆さんのことはまだよく知らないけれど…でも素敵な場所だから、平和であってほしい」
ルカは一瞬だけ
レイアの瞳に釘づけになってしまった。