第6章 2nd Night 【ルカ・クレメンス】※R-18
月小屋の中は昨日と同じ。
レイアは少しだけ、この家の中の空気感になじんできたような感覚があった。
(住めば都…とは言いたくないけれど)
テーブルの上に持ってきたビスコッティを皿に盛り付け
レイアは椅子に掛けぼんやりとした。
(今日も…無事終われるかな…)
また朝早くにヨナは迎えに来てくれるのだろうか。
今朝の出来事を思い出す。
(今日はあんまりヨナに会わなかったな)
あの美しい琥珀色の瞳が
目を閉じても思いだされて離れようとしない。
その時だった。
リリン…
控えめな、呼び鈴の音。
「…はい」
レイアは玄関の扉を開けた。
「…あ」
そこにいたのは
男性にしては「可愛らしい」という形容が似合うような
美しい顔立ちの青年だった。
濃紫の、少し長めの髪をピンでとめている。
どこかで見たことのあるような瞳の色、目もとのほくろ…
「……こんばんは」
ルカは目を反らし、小さな声で挨拶する。
「あっ…ルカ、だよね」
「…うん。あなたは…レイア、だね」
レイアはこくりとうなづき、ルカを中へと招きいれた。
(なんだか、フェンリルとはだいぶ雰囲気が違う)
「あ…ルカ、お茶飲む?今用意するね…」
「……あなたは座ってて」
ルカは抑揚のない声で短く言い放った。
「え…あ、うん……」
ルカは持ってきた包みをテーブルの上に置くと、キッチンの中へ入り手際良く準備を始めた。
「あ…」
さすがあれだけの料理を作るだけあって、ルカは無駄のない動きで準備を進めていく。
「……中、開けてくれる?」
「え?あ…これ?」
お茶の葉を準備しながらルカはレイアに指示を出す。
ルカが持ってきた包みの中を開くと
いい香りが漂ってくる。
「うわぁ…美味しそう!」
中身はローストビーフのサンドウィッチだった。
デザートにはクレームブリュレが入っている。
「わぁ!!クレームブリュレ?私大好き!」
すると、表情の硬かったルカが初めてふわりと笑った。
「…よかった。あなたに喜んでもらえてうれしい」
そのふわりとした笑顔も、どこかで見たような「既視感」に苛まれる。