第37章 London days【ヨナ・クレメンス】※R-18
ぎこちない動きで背中を見せないように正面に回るヨナに、レイアは訝しげなまなざしを向ける。
「……ど、どうしたの?」
ヨナは少し顔を赤くしながら、背中に隠していたものを目の前に差し出した。
「!!……ヨナ、これ…」
ヨナがはにかんでレイアに差し出す。
「あの時のと同じ花は無かったけど…」
それは
クレイドルでデートした時に、レイアがヨナにリクエストした花のブーケだった。
ピンクや紫のかわいらしい花がこじんまりとまとめられている。
「これ、どうしたの?」
「どうしたのって、そこの花屋で買ってきたんだよ」
「………私のために?」
「君も変なこと聞くね。他に誰がいるの?」
レイアは差し出されたブーケを受け取る。
セントラルでプレゼントされた時の花は、月小屋に飾っていた。
ヨナからの花を飾っておけば、寂しかったり辛い思いをしても、ヨナのことを思い出せる気がして。
あの頃の記憶が蘇る。
ヨナは再び隣に座って話し始めた。
「俺は赤の軍の誇り高きクイーンとして…平和が訪れた後も、ランスロット様にお仕えして職務を全うするつもりだよ。でも……君にもそばに居て欲しいと思ってる」
そう言いながら、レイアの手に自らの手を重ね、指を絡めあった。
「赤のクイーンで在り続けながら君を望むということは、君をこの生まれ故郷から引き離すことになる。分かってはいたけれど……本当にそれでいいの?」
「何言ってるの、ヨナ」
レイアはにっこり笑う。
「私が、そうしたいの。だからアパートも引き払うことにしたし、パティスリーにも退職するって伝えた。ヨナが居てくれたら、私は大丈夫」
「ありがとう……レイア」
風が少し冷たくなる。
「そろそろ帰る?」
「そうだね。ヨナ、晩ご飯は何がいい?」
「買い物しながら決めようか」
ヨナとつないだ手が温かい。
絡んだ指先を、離したくなくなる。
それはヨナも同じようで
つないだ手に視線を落とし、ふっと笑みをこぼしていた。
(嬉しそうな顔してる…)
そんなヨナを見て、満たされる。